【BL小説感想】mother-丸木文華
【作品データ】
mother
CP:塚越祐紀(表紙左)×佐藤真治(表紙右)
他CP:モブ×佐藤真治、モブ女性との交際歴あり
著者:丸木文華
発売日:2013年1月22日
出版社:白泉社
【あらすじ】
「天使のような子」と言われ天真爛漫だった真治は、あることをきっかけに人間不信に陥ってしまう。けれど親友の塚越だけは、いつもそばにいれくれる特別な存在だった。支えてくれた塚越のおかげで再び社会に馴染めるかと思った矢先、自宅に差出人不明の封筒が届く。そこには過去の事件の写真が…。淫らに乱れた記憶がよみがえり、自分はけがらわしい存在だという思いにとらわれた真治は、再び自分の殻に閉じこもろうとする。けれど塚越は、そんな真治をも受けとめてくれた。優しすぎる塚越に、いつしか真治は依存するようになり……。
https://www.cmoa.jp/title/1101090213/
【ネタバレなし感想】
「愛」がテーマの重いBL作品
だと勝手に思っています。「愛」とひとくちに言っても、恋愛だけが愛ではないんだよなぁ……と再認識しました。とにかく重くて、最高でした。
かなり重症な執着攻めと聖母受けの共依存
攻めの塚越くんがかなりの強い「執着攻め」、受けの真治はいわゆる「聖母受け」ですね。執着攻めと聖母受けが好きな人(もちろん私もです)にはおすすめな作品だと思います。愛が重い重すぎる……(最高)。
ミステリー要素も詰まった作品
丸木先生独特のミステリー要素も詰まった作品だと思います。どんどん伏線が回収されていくので読み進める手が止まりませんでした。痛快です。
【ネタバレあり感想】※未読の方はご注意ください。
冒頭からしてもうワクワクが止まりませんでした。天使と言われて育った眉目秀麗な真治が、汚れた都会の片隅で写真に囲まれて嘔吐している描写には鳥肌が立ちました。
過去に何があったのか、これから何が起こるのか、嫌な予感しかしなくて最高ですね。冒頭の電話、高校生活の回想での人のよさそうな塚越の存在もまた不穏な空気を醸し出していて、心が躍りました。
塚越の、過剰なほどの真治への気遣いや、生い立ちが明かされる度に「これは……」という。お金持ちで、友達も多くて、一見完璧に見える中に歪んでいるところをひしひしと感じますね。
その後、バイトするカラオケ店で、変な客に絡まれているところを助けてもらい、友達みんなに合格祝いをしてもらい、最高の夜からどん底に突き落とされ、壊れてしまった真治を思うと胸が痛みました。(最高)
部屋から出られなくなった真治の、門地先生の挿し絵もまためちゃくちゃえっちで最高ですね。清廉潔白とまではいかないけど、普通の高校生だった真治が尻に目覚める課程、自分から求めてしまう思考、全ての描写がえっちだなーって思います。
その後の「天使」の章ですが、「祐紀に近づくな」と敵意を向ける伊織に「どうすればいいの」とまっすぐ向かっていったり、嘔吐してしまった伊織をフォローして後かたづけしたりと、いっそ心配になるほどの「天使」なんですよね。人の悪意に鈍感で、自己犠牲の精神が強い、真治の長所であり短所なんだろうなぁと思いました。
そして保健室で、塚越が真治に「もし吐いたら片づけてくれるかなあ」と尋ねるシーンと、「母親は天使なんだ。」の一文で塚越の歪みの予感が確信に変わり、にっこりです。
「告白」では、塚越のマンションにて言った真治の「じゃあ、俺を、抱いてくれよ」で脳内お祭り状態になりました。ここまで真治がいかに「天使」だったかが語られていたので、ようやく汚いところがアウトプットされて、冗談抜きでドーパミンがどばどば状態でした。こういう対比に弱いです。
しかしその直後では優しい展開だったのでいったん鎮火することができたので良かったです。(?)それにしても、ここで犯人について、塚越の優しい態度と天野の存在のせいでまんまと煙に巻かれてしまうんですよねー。
事件のことを話したあとも、ひたすら優しくして友人として接したり、塚越ってとにかく狡猾なんですよね。頭がきれるし、真治が罠に自分から入ってきてくれるようにずっと辛抱強くねらっていたわけですから、ものすごい執着の強さを感じます。好きです。
「名前を呼んで」で真治のいる寝室に入った時も、そうなるように毎日真治をかまい続けていたんだろうなあと容易に想像がつきますね。そしてそのあとの展開では、今度こそドーパミンどっばーですね。このギャップがたまらなく好きです。
その後、真犯人を突き止めるためにと天野に会い、山崎の部屋でデータを見つけたという展開でしたが、真犯人は山崎だったのか! ところっと騙されてしまいそうになったので「あ、あぶねえ……」と一人でどきどきしていました。(笑)アホですね。
それから同窓会で塚越の本性が真治に知られるところとなったのですが、そこで真治が塚越を受け入れたのが本当にびっくりしたんですよね。真治も塚越のことが本当は昔から好きだったということなのだと思いますが、始まりがあまりにも普通じゃなかったですからね……。
案外塚越が普通に告白していればまた違った穏やかな未来があったのかもしれないですね。本当に愛されるということを知らなかった塚越にはそれが難しかったのかと思いますが……。
塚越を「赤ちゃんだもの」と言い、丸まま愛して受け入れる真治はまさに「母親」そのものなのだろうなあと思います。愛着障害を持った塚越と母性を持った真治は、ある意味ベストカップルといえるのかもしれないなあ。というか、どう考えても共依存ですね。大好物です。
【まとめ】
後味がいいとは言えないラストではありましたが、真治が幸せならそれでいいんだ……という謎の感慨深さがありました。もう何度も読み返している作品ですが、今回この記事を書くにあたってまた読み返せて楽しかったです。大好きです。
以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。