【一般小説感想】52ヘルツのくじらたち-町田その子

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目次

あらすじ

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一匹だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そ
のためこの世で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。
〈解説〉内田剛

https://www.cmoa.jp/title/1101388289/

【作品データ】

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作者:町田その子

出版社:中央公論新社

初版年月:2023年5月25日

【ネタバレなし感想】

直接話しかけてくれているような優しい文章

私(読み手)に直接話しかけてくれているような文章だなと思いました。とても読みやすくて、すっと入ってくる感じだと思います。2、3日〜くらいでいい感じに読めるボリュームです。読書感想文を書きたい学生さんにもおすすめなのではないかと思います。

毒親という問題の根深さ

主人公の母親を始め、色んな毒親が出てくる作品でした。過去の描写がグサグサ刺さってきて「うっ……」となるところもたくさんあります。でも作品全体はとても静かで優しい空気に包まれていると思います。何より主人公の弱さと強さの両方に惹かれました。みんな幸せになってほしいと思いました。

【ネタバレあり感想】

最初に言いたいことがあります。美晴、最高!!!!(涙)あまりにも美晴がいい子なので「実は裏切るのでは……?」と疑心暗鬼になるほどでした。美晴〜!! 大好きだよ〜!!(?)

主人公である貴瑚のことは最初の印象では「さっぱりとした強いお姉さん」という感じだったのですが、物語が進むにつれて貴瑚の弱いところや欠点も見えてきてより好きになりました。中村をいきなりひっぱたいた貴瑚、MP3プレーヤーを大事に抱えている貴瑚、主税の愛人になることを望んでしまう貴瑚。。ああ、貴瑚!! 魅力的な人だなぁと思います。

貴瑚の過去は読んでいて本当に辛かった。母親、義父、弟、漏れなく心を寄せる余地なしの醜悪さで、読んでいて辛かったです。でも、この三人が読者に憎しみすら抱かせてしまうほどの悪で良かったなとも思います。もしこれで母親の辛い過去の描写なんてあったら「この憎い気持ちをどうすればいいんだ!!」って暴れていたかもしれません。これからの貴瑚の人生に一切関わってこないことを願うばかりです。

愛くんはひたすら可愛くて愛おしかったです。美琴のヤバい女さと祖父のヤバい男さとの対比で愛くんが天使に見えました。小さい頃、母親に引き取られる前の幸せな生活の話を読んだ時は涙が出そうでした。。母親が帰ってきさえしなければもっと愛くんは……と思うと。母親(琴美)の「ずっと可愛がられる側でいたい女」の描写も妙にリアルで不気味で、、読んでいてつらかったです。

そして中村が好きです。ひっぱたかれた貴瑚に惚れるという謎の男だけど絶対悪いヤツじゃないという安心感が終始ありました。(地域の雰囲気には染まっちゃってるけど)絶対頭に白いタオル巻いてるだろうな、と思いながら読んでいました。(謎の偏見)

主税も嫌いじゃない……でも、主税は元々貴瑚を愛玩動物扱いしたいのが見え見えだったのでクソ男だなと思います。自信家で堂々としていて、お金もあって、体躯もある。。寂しさを持っている貴瑚には大きな魅力だったと思います。でも「俺(主税)が魂の番だ」は絶っっ対違うと思ったし、初対面のアンさんに敵意むき出しなのも嫌だった。でも、貴瑚のお腹に包丁が刺さったあとも貴瑚と離れたがらなかったのはちょっと哀れでしたね……。いや、でもDVでマイナス5000000兆点なのでやっぱりダメです。

そしてアンさん。貴瑚とアンさんの出会い〜アンさんのお葬式までの話がつらすぎてつらすぎて、もうこの本は読み返せないかも……と思っています。アンさんがとても優しくて、好ましい人だというのはとてもとても分かります。でもあまりにも不器用すぎて……どうして貴瑚に「自分が魂の番だ」と言ってくれなかったのか、と理不尽なことを思ってしまい反省です(?)

アンさんはアンさんで、自分がトランスジェンダーだという負い目のようなものを持っていたから(受け入れてくれない母親のこともありますしね……)貴瑚に本当の気持ちを言えなかったんだろうなと思います。主税にも直接言えなかったのも。でも、絶対に自死だけは選んでほしくなかったなぁ……アンさんだけは……と思います。私の中で、貴瑚の母親に「クソババア」と言ったかっこいいアンさんと感動した貴瑚の印象がとても強かったので、アパートの風呂場でのあの再会と別れはあまりにも読んでいてつらかったです。

母親に髭を剃られて、綺麗に化粧されたアンさんの描写もつらかった。貴瑚ももっと上手く立ち回れたかもしれないけど、、アンさんほんとダメだよおお……って泣いてしまう。つらすぎましたね……。

タイトルにもある「52ヘルツのくじら」、作中にたくさん出てきたなぁと思います。貴瑚、愛、アンさん、、そして、愛が夜の海に飛び込もうとしたのを貴瑚が止めた時、海にくじらがいたシーンは感動しました。あのくじらは、アンさんでもあり、貴瑚の祖母の待ち人でもあったんですね。今頃は海で仲間たちと泳いでいるのかなぁと優しい気持ちになりました。

そして、バーベキューに乱入してきた祖父を突き飛ばした愛くんを見て、ああ、この子は強くなるなぁと確信しました。男の子ですしね。貴瑚と再会した時のみちがえるほどの成長を予感させるシーンだと思いました。物語はあそこで終わってしまいましたが、あのあともみんなそれぞれの場所と人生で幸せになってほしいなぁと思います。

【まとめ】

読む前はこんなに辛い気持ちになるとは想像だにていませんでした。。でも、みんなそれぞれの人生を真っ直ぐに一所懸命に生きているのだな、と「頑張ろう」と励ましてくれる作品だと思います。みんな幸せになってほしいです。

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