【BL漫画感想】僕の美しいひと-カシオ
【作品データ】
僕の美しいひと
CP:吉良和彦(表紙右)×小野寺忍(表紙左)
著者:カシオ
発売日:2019年10月15日
出版社:新書館
【あらすじ】
「吉良が僕を抱いたのは、僕がセクサドールだから―――。」秘密を抱えながら全寮制の名門校に編入した忍。学校で一目置かれる存在の吉良と親しくなっていくが、彼に秘密を知られてしまい……!?
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【ネタバレなし感想】
ダークな話です。大好きです。
「心を殺す方法」でカシオ先生の作品に魅了され、「僕のうつくしい人」もすぐに購入しました。「心を殺す方法」よりは明るいかと思いますが、今作もダークです。いわゆるメリバだと思います。最高です。
ずっと泥の中をもがいているような感覚
浮上しては突き落とされ、浮上しては突き落とされというストーリーで、読んでいる間ずっとハラハラしていました。ラストも胸が締め付けられるようなほろ苦さで、やっぱりカシオ先生の作品は最高だな! って思いました。
「かわいそう萌え」な人にもおすすめ
私がそうなのですが、暗い過去や経歴持ちのキャラが好きな人におすすめな作品だと思います。忍くんも吉良もかわいそうで、これがまた萌えるんですよね。心をぐっと掴まれました。
【ネタバレあり感想】※未読の方はご注意ください。
まず主人公の忍くんがめちゃくちゃ美人だと思いました。いきなりタイトル回収か~なんて思っていましたが、のちのち自分の大バカ野郎! ってなりますので私は大バカ野郎ですね。(?)
暗いお話なんだろうな~と思いながら購入したので、寮暮らしになるということでワクワクが止まりませんでした。寮制、男子校と来れば太古からの定番ですからね。大好物です。
吉良と忍くんの同室生活が始まり、最初は怖がっている感じでしたね。この時点では、忍くんの「施設」育ち、脱げない長袖ジャージ、ボタンを一番上まで留めてきっちりとネクタイをした禁欲的な出で立ちということで、この子絶対暗い過去があるな……という予感が一層頭をもたげてきてですね、ウキウキ半分ハラハラ半分といった気持ちでした。
忍くんの方が吉良よりも成績が上ということが分かったあとクラブに連れて行かれたシーンでは、吉良にも意外と人間くさいところがあるんだなあという一面が見られて驚きでした。正直、このシーンが来るまで吉良のことを正体不明な恐ろしい人のように思えていたので、素直に忍への嫉妬を露わにしているところなんて「かわいい」とさえ思いました。
しかしそのあとの忍くんの「バイオロイド」発覚、生い立ちの回想の衝撃でちょっと吹っ飛んでしまいましたが……。そういうことかあ、って思いました。そのあと、吉良が忍に心を開き始めてクラスメイトから一目置かれるようになった時も、不穏だなあ……なんてため息をついてしまいました。これは一波乱ありそうだなと。
吉良のサッカーの試合が終わり、食事会に呼ばれた時のご母堂の態度ももう「うああああやばい……」という謎の焦りが。(笑)絶対何か起きるじゃん! ってもはや半泣きでした。忍自身も吉良を好きになっていくし、吉良も忍のことを本気で信頼しているというのが分かってきて、良い状況になっているはずなのに、まるで真綿で首を絞められているかのような息苦しさがつらかったです。
徐々に分かってくる「ハーネス」と吉良の家業、バイオロイドに対する世間の目、深まる吉良と忍の仲。もう絶対つらいやつ。そして予定調和でハーネスの服用がバレてしまうという……。ここからは転げ落ちるように状況が悪くなっていく一方で、分かっていても悲しかったです。
ただ、吉良自身も「バイオロイドは家畜、人間未満の畜生である」という固定観念を植え付けられていたわけですから、吉良だけが悪いとはとうてい思えなかったのですが……。
「痩せたな」や「あの時忍の口から本当のことを聞いていたら」という台詞から、吉良が本当は忍のことを嫌いじゃないって分かりますし。ただあの時忍は言おうとしてたんですけどね。すれ違いがもどかしい。
そしてですね、ここで私の大誤算(?)が生まれてしまうのですが、吉良のお兄さんマジでかっこよくないですか。なんでしょう。ベッドで忍に迫ったり色々とクズいのですが、達観的なところがかっこいいなあと思いました。あと煙草。(煙草キャラにめっぽう弱いです)
車の中で吉良を懇々と諭すお兄さんとか惚れてまうね。そしてハーネスの存在の衝撃。こう見ていると、吉良はやっぱりまだ子供なんだなあ……と感慨深い気持ちになっていました。吉良がいとおしい。
そこからの土砂崩れ事故でしたので、めっっちゃくちゃ落ち込みました。(笑)まさにどん底ですね。悩むのも怒るのも、すべては命あってのことですから……。突然の死は恐ろしかったです。
吉良がいなくなって、みんなは日常に戻っていくのに、忍だけ吉良のことばかり考えている様子は切なかったです。そして卒業を迎えて最後に寮を見ていた時の、あの再会のシーンですね。ここで真のタイトル回収がきたので「自分の大バカ野郎!!」となったわけです。お互いにとってお互いが「僕の美しいひと」でしたね。
吉良はお兄さんのクローンですから、「同一人物」というわけだったのですね。お母さんですら吉良に意思表示されるまで分からなかったのに、一発で言い当てた忍くんは本当に好きだったんだなあ……と切なく思いました。これから一生、忍も吉良の罪を一緒に背負って生きていくんだなあと、しんみりとする少し寂しげなラストだなと思いました。
【まとめ】
読み終わったあと、吉良のお兄さんのことを思って密かに涙しましたよ……。電子書籍版のおまけの漫画で更に涙が……お兄さん……(泣)
以上、最後まで読んでくださってありがとうございました。